ドイツ留学日記 ~Eile mit Weile~

短期留学・長期留学・海外の概念・美容・旅行・海外勤務・一人暮らし・学生・人生観・節約術などの役立つ情報を、ドイツからマイペースにお届けします。

目次
Goethe Zertifikat B1 独学攻略法
ドイツ旅行・留学 おすすめの持ち物
音楽用語のドイツ語が学べる便利な本

アメリカ体験記① 到着

 

山、湖、夕日、森……!!!
思い描いていた「ニューヨーク州のミュージックフェスティバル」とはかけ離れた景色に、あぁ、もしかして私は千と千尋の神隠しのような世界に来てしまったのかもしれない、とさえ思った。

 

ニューヨーク州の外れ、カナダ モントリオールのそば。

まさに「結界」がそこにはあった。

 

飛行機を乗り継ぎ、タクシーで森を抜け、(初めて「馬に注意!」の看板を見た)
フェリーで大きな湖を渡り、向こう岸からまた山奥へ進んだ場所。

そこで私は、二度とない、貴重な夏を過ごすことになる。

 

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2年半前の冬。

「夏休み、何か予定ある?」

 

門下の大先輩で、今は講師を務めるスペイン人の方が、室内楽のコンサート後に声を掛けてくださった。

「ニューヨークのミュージックフェスティバルで今年はピアニストが足りなくて、1人いいピアニストを探しているんだ」

彼はそう話してくれた。

 

「奨学金を出してもらえると思う。僕も昔行ったんだよ。自然が綺麗で、友達がたくさんできて、本当に楽しかった。また行きたいよ!」

紆余曲折あったが、アメリカのビザ、健康診断表などなど…
たくさんの人の助けもあり、ようやく様々なトラブルを乗り越え、気づいたらあっという間に6月になった。


先輩の歌の試験の伴奏を終え、慌てて2か月分の荷物をトランクに詰め込み、エレベーターのないマンションの4階から駆け下りた。

ぎりぎりの電車に飛び乗ってフランクフルトへ向かった私は、重いトランクによって股関節を完全に痛めていた。

 

空港で荷物の重さを確認したときは、37kgあることがわかった。

ちょうどその日、ICE(ドイツの新幹線)の中で、小林麻央さんがお亡くなりになったニュースを見て涙が止まらなかったのを覚えている。

 

人生で初めてのアメリカ。

優しくも厳しい世界が待っていた。

 

24時間以上の旅を終え、ようやく「ライラック」と名付けられた寮の前に着いた頃、吸い込まれるような満天の星に見とれていた。
大きな岩にすら気づかず、アニメのように派手にドーンと転んだ。

 

10kg近いリュックサックの重みが、一段と深く肩に食い込んでいた。

 私を引率してくれたジュリアードのチェロの男の子が私の重いトランクを持ち上げて、部屋の中まで運んでくれた。

 

本当にありがたかった。

 疲労で目を開けていることさえ困難だったが、チェックインをしなければならなかった。

 

最初に連れていかれた場所は、まるで湯婆婆(千と千尋に出てくる湯屋の魔女)のモデルなのではないかと思わせるようなおばさんのいる保健室だった。

首に付いているジャラジャラしたネックレスが、やけに印象的だった。

 

その後、事務室へ連れて行かれた。
事務員は、メリーさんという方だった。

 

想像していた若いお姉さんではなく、白髪で、白いモコモコした犬を連想させる、
コメディドラマに出てきそうなおばさんだった。

(後日、メリーさんが本当に白いモコモコした犬を飼っていると知った。
飼い主が犬に似たのか、犬が飼い主に似たのか。)

 

寒さと空腹が、疲労を上回っていた。

クラスの確認と寮長への挨拶を済ませたあと、23時を回っていたにも関わらず、
ネギ入りのパスタを少しだけもらって食べたのを記憶している。

 

さっきのチェロの男の子の引率で「ライラック」へ戻り、酷く痛めた股関節と、岩で転んだ時にできたヒリヒリする傷をかばいながら、なんとも出の悪いシャワーを浴びて、なんとかベットにたどり着く。

とにかく凍えそうなほど寒い。

 


ドイツを出発する際、フランクフルトで一泊したのだが、そちらは暑くてなかなか寝付けなかった。
ホテルの冷蔵庫で持参した水を冷やし、それを抱き抱えて寝たくらいだ。

 

まさかアメリカの夏がこんなに寒いなんてどうして予測できただろう?

今でこそ、ネットで天気予報くらい見てから出かける癖がついたが、そもそも当時、私はドイツで引越しを終えたばかりで、ベットもWi-Fiも家になかったのである。


何度も寒さに目を覚ましながらも、持って来た限りの服を体にかけて、眠り続ける努力をした。

朝、目を覚ましたとき、窓から差し込む細い美しい木漏れ日と、風邪を引いていない自分と、小さくて古い鳥小屋のような部屋の風景にとても驚いた。

 

 

 

 

つづく

 

P.S. 37kgの荷物を運んだ愛用のスーツケースは

PROTECAの76L。東急ハンズにて購入。

私はこの青色を6年近く使っているが、まだ壊れていない。

大いに役立っているので参考までに。

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