ドイツ留学日記 ~Eile mit Weile~

短期留学・長期留学・海外の概念・美容・旅行・海外勤務・一人暮らし・学生・人生観・節約術などの役立つ情報を、ドイツからマイペースにお届けします。

目次
Goethe Zertifikat B1 独学攻略法
ドイツ旅行・留学 おすすめの持ち物
音楽用語のドイツ語が学べる便利な本

アメリカ体験記② 始まり

 

 前回のあらすじはこちら。

harukawatanabepiano.hatenablog.com

 

 

 

続々と参加者たちが到着し、翌日のお昼にはダイニングルームが人でいっぱいになった。

ピアノ専攻の仲間や先生たちと自己紹介や挨拶をしたり、全体ミーティングで室内楽パートナーを見つけたり(予め主催者によって組まれていた)、「ライラック」寮でミーティングをした。


ドイツから来たのは私1人だった。
あとは圧倒的にアメリカ在住の様々な国籍の人、そして中国、台湾、ポルトガルから来た人。

 

久しぶりに使う英語と、いつも使っているドイツ語が混じり、先生に対してまで「ヤー!」と言ってしまう始末。(失礼!)
ドイツ語ではJa (はい)だが、英語では Yeah (イェーイ🤟🏻)みたいな感じになってしまう。

 

ピアノは6人。
弦楽器が200人以上。

 

翌日の午後。
新しい友人たちとダイニングルームで夕食を食べていた時だった。
その日はさらに悪天候で、稲妻と雷のものすごい音が同時に視界と地面を切り裂いていた。

 

そんな中、とても可愛らしい、アイドルにいてもおかしくないような同い年くらいの女の子が到着した。

名前はスージャン。

 

私と同じく、ニューヨーク州がこんなにも真夏に寒いと知らず、ミニスカートにサンダル、Tシャツで大雨に濡れていた。
彼女は私とジェレミー(アメリカ在住の日本人の男の子)のいたテーブルに来るなり、「もう帰る!」と色白な顔をますます白くして震えていた。

 

私も帰りたい、と思わず口にした。

骨の芯まで冷える寒さだった。

 

若いジェレミーは、帰りの計画を真剣に立てている2人を見て、無邪気に笑っていた。

本当に帰ろうとして、私は何度か安い航空券を探している。

 

同日には、ソロのレッスンと、ドヴォルザークのピアノ五重奏第2番の合わせが始まった。

ソロについては、後ほど詳述しよう。

 

室内楽のメンバーは、香港から来た3人と、(いずれも香港でアイヴァン・チャン先生の元で勉強していて、とても素晴らしい弦楽奏者だった!)カナダから来た1人、そして私。

おぉ、弾ける人たちだ! というのが第一印象。

 

特に第2ヴァイオリンのニーナは、数回香港ですでにドヴォルザークの2番を演奏した経験があると言う。

パートナーたちが好きな室内楽ピアニストは、メナヘム・プレスラーだと言う。

Piano Quintet in A Major, Op. 81: I. Allegro, ma non tanto

Piano Quintet in A Major, Op. 81: I. Allegro, ma non tanto

  • Emerson String Quartet & Menahem Pressler
  • Classical
  • USD 2.49
  • provided courtesy of iTunes

 

初日は主に1楽章の雰囲気を見て、音程合わせに取り掛かり始め、私はビンビンうるさく鳴るピアノに苦戦した。

私に与えられた練習室は、「ホロヴィッツ」と名付けられた、小さな丸太小屋だった。

 

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外には大小様々なキノコがごっそり並んでいる。

 

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大きめのスタインウェイがギュッと隅に押し込められ、そのそばには古い除湿機がゴォゴォと轟音と熱を発しながら稼働している。

ピアノにカビが生える、部屋にキノコが生える、という理由で、除湿機を消さないでくれ、とミーティングで言われていた。

 

もっとも、消す必要なかった。

除湿器が発する熱のお陰で、寒い外気と比べ、練習室はそれほど寒くはなかったのだから。

 

その夏のほとんどの時間、私はその練習室で過ごした。
決して完璧な条件とは言い難かったが、思い出せば、なんだか仲良かった懐かしい旧友を思い出すような気持ちになる—―


その夜、私の借りたブランケットとシーツを1枚ずつスージャンに渡した。

ブランケットの長さも足りない。

 

寝ていると無意識のうちに足がはみ出す。
足が氷のように冷たくて、雪道を裸足で歩く夢を見る。

 

あまりにも寒くて目が覚める。
足をブランケットの範囲に引っ込める。

 

この繰り返しが朝まで続く。

ネット環境を探し出し、さすがにアメリカのAmazonに登録し、7月頭に真冬用の極暖パジャマを購入したのは言うまでもない。

 

 

 

つづく